『うなぎ鬼』落合裕介・高田侑作【ネタバレ結末】

ホラー漫画

■タイトルと作者

『うなぎ鬼』原作/高田侑・落合裕介作

■どんなテーマなのか?

不気味な人々がいる「黒牟」の街を中心に、社会の闇で生きる人間の恐ろしさを描くサイコホラー。『鬼なるか 人なるか 心眼の有るか無きか』

■巻数

全3巻完結。同タイトル名の小説を原作としている。

■あらすじは?

第1巻

 

倉見勝が借金苦で裏社会に引きずり込まれていく姿と、千脇の故郷である黒牟の不気味さと、そこで暮らす得体のしれない人々への恐怖が描かれている。

回収屋の仕事に慣れた頃、勝は富田と一緒に、黒牟のマルヨシ水産へ60キロ程度のコンテナを運ぶ仕事を任される。千脇にスキンヘッドにさせられ、ますます威圧感が強くなる勝。

「箱の中身は俺達には関係ない」と自分に言い聞かせ、黙って運ぶ勝だが、富田は異常に黒牟を怖がるようになり、「あの中身は人間だ」と言い張る。

妄想、で片付けられないほどに異質な空気を放つ黒牟と、うなぎ養殖場が想像をかきたてる。勝は富田の手伝いでデリドラをするようになり、美しい女・ミキと出会う。

 

第2巻

 

マハロで嬢たちの送迎をするうちに、妻の若いころによく似ているミキに惚れてしまう勝。富田は何かと理由をつけてマルヨシ水産の仕事を断るようになり、「黒牟は普通じゃない」と怯える。

千脇は富田の様子を知って「嘘は育つ。身内をつぶすのはつれえ」と勝に話して、富田の粛清を匂わせる。勝はだんだんうなぎ養殖場での悪夢を見るようになる。

マルヨシ水産の仕事帰りに千脇の弟に声をかけられて、黒牟でモツ鍋をごちそうされる。そして、まるで人間の歯に見える骨をかじってしまう。マルヨシ水産のメンバーたちは、誰一人、モツ鍋に手をつけていなかった。一体何の肉を食べさせられたのかと、ますます疑惑が深まる。

そして富田が黒牟の街にもう行きたくないから、という理由で逃げ出すと打ち明けられ連絡が取れなくなる。

一方、ミキは勝を「いい男」と言って好意を露わにし、メアド交換をして親しくなると「妹に子供ができて困っている」と相談して、勝から金を借りる。だが、ミキには裏の顔があり、勝に嘘をついて金を引っ張り利用していたことがわかる。

 

第3巻

 

ミキの金ヅルにされて騙されていたことを知った勝は、キレて車内でミキを乱暴するも、力加減を間違えてミキを死なせてしまう。死んだミキを見て取り乱し、千脇に電話をかけると、千脇がやってきてマルヨシ水産へ連れて行かれる。

千脇と秀がミキの死体を処理して、勝は黒牟でかくまわれる。妻の朋子から子供を授かった、という連絡がくるが「帰れない」と涙を流す。1週間後、ほとぼりが冷めた頃に仕事に復帰した勝は、死んだはずのミキからのメールが届き、驚愕する。

 

■登場人物の紹介

 

倉見勝:33歳で体格が大きくて強面だが、実は怖がりの泣き虫。真顔が怖い。競艇で借金を作り千脇に身請けされて回収屋になる。妻の朋子がいる。

富田:キャバクラの雇われ店長だったが、店の金を持ち逃げして見つかり、借金を千脇に肩代りしてもらって部下になった。女の扱いがうまく、「マハロ」を任されている。

千脇公一:借金の取り立て屋・千脇エンタープライズの社長。倉見と富田を借金から救う代わりに自分の配下にした。黒牟出身。

千脇義道:千脇公一の弟。黒牟のマルヨシ水産で働いている。左手には親指しかない。

信吉:マルヨシ水産で働く、不気味な老人。歯が抜けていて笑顔が怖い。

秀:顔に大やけどがある男。若いころ電力会社で働いたときの事故で感電した。顔のせいで娘に怖がられ、妻と離婚。

山木:マルヨシ水産で働く根暗そうな青年。

倉見朋子:勝の妻。中学生時代からの同級生だった。ヘルスの仕事をしていたが勝に拾い上げられて結婚した。

ミキ:「マハロ」で働く嬢のひとり。勝に近づき、同情話で金を巻き上げる。

詩音:黒牟の街にいる謎の女の子。戸籍も国籍もない不法滞在の親から生まれた子。

 

■結末

 

死んだミキには、兄がひとりいました。「マハロ」で働く前は、黒牟にいた、と聞いて愕然とする勝。妹の敵を取るために、兄が勝を狙い、拉致監禁されてしまう。秀がやってきて命だけは助けられたが・・・

 

■コメント

 

最後まで息をもつかせない展開でした。黒牟の街に漂う薄気味悪い雰囲気のせいで、何もかもが怪しく、富田が「あれは人間だ」と疑ったのも無理はありません。誰も彼も怪しすぎて、犯人に見えてきてしまいます。

そんな疑い物語終盤まで続きますが、秀が最後に話した「黒牟じゃ絶対に殺しや盗みはしない。ここの人間はずっと奪われ続けてきたからさ」という言葉が、ズシリと胸に響きました。

 

■作品への評価

 

小説を原作としているため、よどみないストーリー展開でテンポよく読めました。罪を犯した勝は、その罪を意識しながらも妻とお腹にいる新しい命とともに静かに生活を送る、というところでどんでん返しが待っていた、というのも良い終わり方でした。