『金魚妻』黒澤R作の漫画【ネタバレ結末】

恋愛漫画

■タイトルと作者

『金魚妻』黒澤R作

■どんなテーマなのか?

夫にないがしろにされた人妻が『なぜ一線を越えたのか』をテーマにした4編の短編漫画集。

■巻数と試し読み

1巻〜2巻

■あらすじは?

「金魚妻」

 

専業主婦・平賀さくらはマンションに夫と二人暮らし。金魚に魅せられ、近所の専門店で店長の豊田と親しくなる。

旦那から金魚を飼ってもいいという許しをえて、自宅に水槽を設置するが身勝手で冷たい夫は「返してこい。じゃなけりゃおまえが出て行け」と怒られる。

さくらはひそかに探偵に依頼して、夫が浮気していることは調査済みだった。

豊田は店の飼育場で水槽を置いて金魚を飼えばいい、とさくらに勧める。商品にならない「ハネっ子」から選んだ金魚を育てながら、豊田に夫の浮気のことを話すさくら。

いつしかふたりは男女の仲になり・・・

 

「出前妻」

 

実家の蕎麦屋を継いだ夫を手伝い、出前持ちしている妻の岡崎杏奈。店には昔、夫が付き合っていた元カノの祥子が出入りしていた。

祥子はシングルマザーだったが美人で、夫の妹からは「この二人のほうがお似合い」だと杏奈の前で平気で公言する。

客の五味田から蕎麦が届かないというクレームが来て、慌てて飛んでいく杏奈。

だが、杏奈はひそかに五味田と関係を持っていた。

「手のかからない働き者の嫁」でしかない、嫁の立場で疎外感を感じていた杏奈の、唯一の憂さ晴らしだったからだ。

 

「弁当妻」

 

津多の上司の保ヶ辺には、変わった性癖があった。結婚8年目になる愛妻とマンネリ化したくないために部下に「当て馬役」を頼んでくるのだ。

津多には昔、付き合っていた彼女を友達に取られた過去があり、「誰かに好きな女性を奪われる」トラウマがあった。

料理上手で美人な妻・保ヶ辺朔子は、夫を満足させるために津多と恋人ごっこをするものの、次第にふたりは本気になっていく。

 

「見舞妻」

 

河北真冬は、小学生になる息子の担任教師・平野を誤って車ではねてしまった。

入院した平野を見舞う真冬だったが、家で夫に「俺達に迷惑かけんじゃねーぞ」と冷たくされる。

そもそも事故った原因は、友人の家で宅飲みしていた真冬に「すぐに返せ」と無理やり夫が車で帰宅するように命令したからだった。

昔はラブラブだったのに、と平野に愚痴る真冬。平野はお金はいらないと言い「昨日のあれもう一回やってください」と真冬に頼む。

真冬は一線を越えたあと、夫から自由になりたがっている自分に気づいてしまい・・・

 

■登場人物の紹介

 

平賀さくら:24歳の専業主婦。夫に専業主婦になってほしいと言われていた。

岡崎杏奈:29歳、夫の蕎麦屋を手伝う。子供ができず、夫と微妙な距離に。

保ヶ辺朔子:27歳、タワマン暮らしの主婦。夫は中学生の頃の個別指導塾の先生だった。

河北真冬:23歳のヤンママ。小学生の息子がいる。夫に暴言を吐かれている。

 

■コメント

 

表紙買いしてしまったほど、絵が綺麗! それにどの話も魅力的で、夫との関係に悩む人妻たちの美しさに魅了されます。

一線を越えて「イケナイこと」をしてしまうわけですが、不思議と嫌悪感がわいてこないのは、無神経な夫に虐げられたり、冷たい扱いをされて「それが正当なこと」だと思えるような展開になっているからです。

一番好きなのはやはり表題作の「金魚妻」で、暴言系のDV夫に冷たくされる人妻・さくらが金魚の美しさに慰めを求めたり、金魚屋に逃げ込んで癒やされていく様子がじんわりときます。

 

「金魚の目的は、人間の美に惹かれる一番弱い本能を利用している」という店長の言葉。

美しさは、生き残るための戦略のひとつだという自然界のたくましさに、人妻の美しさが重なって見えます。

 

■作品への評価

 

「人妻が一線を越えた理由」をテーマに編み出された4作とも、絵、ストーリーともに高いクオリティです。

恋をして結婚して幸せになったはずの人妻たちが、夫とのままならぬ関係の中で悩み傷つき、癒やしを外に求めていく。

黒澤R先生の独特な色気ある空気感と、背徳的な人妻たちの美しさ。1巻が人気になったので2巻もリリースされています!