『復讐の未亡人』黒澤R作【ネタバレ結末】

復讐漫画

■タイトルと作者

『復讐の未亡人』黒澤R作

■どんなテーマなのか?

会社に夫を殺された未亡人が、姿と名前を変えて潜入し復讐を果たす。

■巻数

全1巻で一旦完結。9話収録。その後、『毒りんごcomic』第9号から密のその後を描く続編がスタート。現在3巻が発売されている。

 

■あらすじは?

第1話 ビギニング

夫・鈴木優吾を追い詰めた、パワハラの橋本課長への復讐を開始。社内で弱い立場の社員に暴言を繰り返し、斎藤が抗議する。鈴木密は優秀な派遣社員として潜り込み、信頼を得ていた。橋本課長の愛人となり、信用させて陽史から受け取った毒を少しずつ飲ませる。

一息に片付けるよりも、じわじわと死ぬよりもひどい目に合わせる。それが密の狙いだった。橋本課長は絶頂で倒れて入院し、再起不能になる。病院では最期まで密の名前を呼びながら死亡。

第2話 クズとコウモリ

創業者のコネ入社・古武和也は「これ明日までやっといて」と斎藤に仕事を押し付けて、自分はトイレでゲーム三昧。権力はあるが、能力はない男だった。勤務中に密があらかじめ仕込んでいたメールに彼女のハメ動画を大音量で流してしまい、顰蹙を買う。

叔父から客の出張サポートに行くように命じられる。行った先で陽史に密室に閉じ込められて、罵られながら仕事をさせられる。嫌われ者の古武和也を探しだそうとする者はなく、部屋の中で精神が狂っていく。

第3話 口は災いのもと

板橋かおるは依存心の高い女で、優吾の死の3日前にも困ったふりをして仕事を押し付けていた。断るのが苦手そうな人を選んで自分の仕事をさせるずるい女だった。かおるへの復讐は、まず自宅玄関前にゴミを散らかして、密に「どうしたらいいと思います?」と相談させるように仕向ける。そしてかおるの飼い猫をさらい、宅急便で猫の写真とホルモンを送りつけて恐怖させる。

第4話 姑息に立ち回るオンナ

企画部正社員の佐伯麻穂は、目立つ密に嫌がらせを始める。派遣の密に社長が社員食堂を使わないでほしいと嘘をついたり、急ぎの仕様変更があったと言って密の仕事を増やそうとする。密は社長に近づいて親しくなり、麻穂の言ったことが急ぎではないとバレる。

第5話 見えてきた真相

社長に密がスカウトされている間、板橋かおるは密に頼りきりだったため仕事に追われて連続ミスをして窮地におちいる。密は社長に順調に取り入り、ホテルで関係を持つ。陽史の報告で、佐伯麻穂が過去に浮気が彼氏にバレそうになり、優吾が迫ってきたと彼氏に嘘をついて暴力をふるわせていたことがわかる。麻穂は密を無理やり夕食に誘い、彼氏に会わせようとする。

第6話 全ては彼女の思うがままに

麻穂の彼氏・前田亜津志は、夕食で密と会ってみて麻穂の話とは違い、いい人だと感じる。そして食事のあと、陽史がすり替えた目薬を使って麻穂は倒れて救急車で運ばれる。

かおるが斎藤真言と一緒にミスを顧客に謝りに行った帰り、かおるは「鈴木先輩を自殺に追い込んだ人間がどんどん消えていく」と告げる。斎藤は密が何者なのか気になり始める。

第7話 復讐に必要なもの

麻穂は亜津志と結婚式場の下見に行き、ウェディングプランナーの友達・沙織と鈴野木(という偽名を使って化けた陽史)と式の打ち合わせをする。沙織と鈴野木は交際しているふりをした。人のものを見ると、すぐにほしくなってしまう麻穂は、鈴野木に色目を使う。

沙織は麻穂に学生時代から恨みを抱いており、「あの女を滅茶苦茶にこらしめてください」と復讐に協力していたのだった。

第8話 同じ瞳の色

麻穂は彼氏に隠れて鈴野木(陽史)と関係を持ち、その様子をビデオで撮られる。会社の雰囲気が変わり、忙しくても職場に活気が出てきた。麻穂は結婚式に斎藤と密を招待する。密は有給休暇をとって、義理の母を見舞い、「いいのよ、新しい幸せを探しても」と言われる。

最終話 恩讐の彼方に

密は社長のスマホを乗っ取って、社長と密会して夫婦仲が壊れるように誘導していた。麻穂の結婚式に出席して花嫁の浮気動画が流され、大混乱になる。密は斎藤に自分が鈴木優吾の妻だったと告げ、会社も辞めることにして「すっきりした」という。斎藤は密を追いかけてきて、「なぜ俺は見逃すんですか?」と尋ねる。

 

■登場人物の紹介

鈴木密:主人公。夫である優吾がパワハラにより追い詰められた末、過労死。会社に復讐するために派遣エンジニアとして潜入する。改名する前の名前は「美月」。

鈴木優吾:密の夫で真面目で優しい、責任感のある性格だった。仕事を押し付けられて鬱になり過労死した。

鈴木陽史:優吾の弟。探偵業をしており、密の復讐のためにアシストをする。

斎藤真言:優吾の元部下で、パワハラにも負けないハッキリした性格。生前、優吾が「あいつになりたいよ」と高く評価していた。両親が離婚し、母親はネグレクトで捕まったあと死亡。施設で育った。密に惹かれて同棲する。

橋本課長:優吾の元上司で暴言・パワハラ男。優吾に仕事を押し付けて追い詰めた。

古武和也:創業者一族の叔父の甥で、ろくに仕事もできないコネ入社。威張り散らすだけでゲームをして遊んでいる。優吾に仕事を押し付けて断れば権力で降格させると脅していた。精神を病んで宗教を開始する。

板橋かおる:他力本願な女で、泣いて困ったふりをして優吾に断れないように仕事を手伝わせていた。猫を飼っている。

佐伯麻穂:企画部の正社員で腹黒い女。自分より目立つ女に嫌がらせする趣味がある。彼氏の前田亜津志は警察官の息子で元暴走族。優吾に濡れ衣を着せ、彼氏に暴行させた。密をつぎのターゲットにする。

社長:IT企業の社長だが跡取り息子なので技術はゼロ。開発部の予算をカットし、そのしわよせが優吾にいった。秘書と結婚し、妻は妊娠中。女好きで密を秘書に誘う。

坂本和代:密と真言が引っ越したマンションの隣人。夫がガンで亡くなったばかりの未亡人。息子がひとりいる。一癖ある性格。

勝浦凛:小学生。学校でいじめられている。親友は萌愛。母とその再婚相手から虐待されていた。弟・舜が義理父の手にかかり復讐を決意する。

 

■結末

優吾を自殺に追い詰めた会社の人間たちすべてに復讐を果たしたあと、斎藤真言に自分が鈴木優吾の妻であったことを打ち明ける。斎藤と同棲し、彼の子を宿す。

 

■続編・2巻のあらすじ

第10話 胎動

会社の連中への復讐を果たし、亡き夫の部下だった斎藤真言と結ばれマンションで同棲し、彼の子を身ごもる密。平穏な生活の中で、密は父と兄から性的虐待を受けた過去と火事の記憶を思い出す。
隣人の坂本和代に引っ越しをの挨拶をするが、真言は「クセのあるおばさん」と敬遠する。密は何があってもお腹の子を守る、と誓う。

第11話 私を して・・・!

隣人・坂本がセキュリティを誤作動させて密たちに助けを求める。問題解決のあと、お茶を飲みながら息子の話をし、密のお腹に子がいると知って「流産」という言葉を連発する。昔のことを思い出し、つわりで吐く密。マンションの階段で小学生の女の子・凛が上から飛び降り、危うく真言が受け止めた助かった。

第12話 すごいね 俊・・・

凛は母親とその再婚相手から虐待を受けていた。学校ではいじめを受け、友達は萌愛しかいない。ある日帰宅すると、義理父は凛とふたりで食事をしに行く、と言い嫉妬にくるった母親が凛に暴力をふるう。母親と弟・舜は義理父から激しい暴力をふるわれ、舜の姿が見えなくなる。凛は「お姉ちゃん、僕、オバケになれたよ。これでアイツをやっつけるんだ」と俊のメッセージを受け取る。

第13話 魔女の笑い

毎晩、常軌を逸した泣き声を出す隣人・坂本。密に介抱された凛は「この人は魔女かもしれない」と、密の不思議な雰囲気に惹かれる。密は凛の体に複数の虐待の跡があることに気づく。真言は通報して警察に任せようと言うが、密は自分が凛を見守ることに決める。

 

■コメント

最初の場面で出てきた結婚式での新婦の暴露ビデオは、じつは最終話につながっていました。鈴木密は夫の死後、すべての人に対して「復讐」を行います。それは自分を残して先に逝ってしまった優吾への復讐も含まれていました。

「私、すごく怒っているのよ。私をおいて先に逝ってしまった優吾のこともね」と。斎藤と結ばれて幸せになったのが夫への密の最大の復讐、だったのかもしれません。

 

■作品への評価

 

夫を会社に殺されて未亡人になった鈴木密は、その頭脳と美貌、度胸と身体で見事に復讐を果たしていきます。「復讐せずにはいられない」という、密の中にある狂気と哀しみに、ある種の美しさを感じます。ただ、ときおり女の武器を使うシーンが「ストーリー上でこれ必要?」と思う場面でも入っていました。

1話ごとにコンパクトに濃い話がまとまっており、最終話を含めた読後感は非常に満足度が高かったです。

※復讐を終えて一旦ストーリーが終了後、その人気から続編が決定。『毒りんごcomic』で連載中。現在密のその後を描いた3巻まで出ています。